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「あたしね、さっき矢澤君とキスしたの」
カランカラン…────
私の目の前に座っている友人の手から箸が落ち、静かな教室内に乾いた音が鳴り響いた。
ぱくぱくと口を開いたり閉じたりする光景は、まるで金魚だ。
口の中にある昼食をもごもごと噛みながら私と友人がお弁当を広げている机の横に仁王立ちする声の主を見上げた。
「矢澤君、あんたにはもう飽きたんだって。彼、優しいから言えずにいるだけなんだからさっさと別れなさいよ」
明るい色に染め上げた長い髪をくるくると巻き、アイラインで黒く強調された目が冷ややかに私を見つめた。
口の中にあったモノをごくりと飲み込み、私はやっと声を発する。
「…それ、タロが言ったの?」
「そうよ」
そう自慢気に言いきると、彼女は満足そうに細い腕を組み私を見下ろした。
口の端に青のりついてるよ。
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