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(死んだ)
そんな碓井一曹の言葉を聞いた坂田二曹の手も、碓井一曹と同じように止まってしまった。
つい一時間前までは、四人でふざけあっていたのだ。
特に本田二曹は坂田二曹にとって、隊内でも個人的でも親友であった。
その本田二曹は今、狭いハンヴィーの座席で息絶えている。
坂田二曹は辛くなる気持ちを抑えながらも、懸命にハンヴィーの中からアサルトライフルのマガジンを取り出す。
それを見た碓井一曹は、坂田二曹の肩を二回ほど叩いた。
坂田二曹の眼からは涙が零れ落ち、取り出した装備と手を濡らして行く
「坂田…
本田の顔は絶対に見るな。
救護隊が来るまで、俺達は警戒しながら待機だ」
警戒しながら待機?
なぜ警戒しながらなのだろう?
坂田二曹は碓井一曹の言葉に頷き、涙を拭きながら装備を取り出し続けた……。
三人は横転したハンヴィーから装備を出し終え、頭の出血箇所を抑えながら座っている渡辺陸曹長の前に整列している。
渡辺陸曹長はアサルトライフルに装弾すると、三人を真剣な眼で見つめながら話し始めた
「実弾を移送中に、我々はテロリストの攻撃にあった…!」
渡辺陸曹長の言葉に、坂田二曹と卜部二曹は声を上げた。
それに比べて、碓井一曹は腕を組ながら冷静に話を聞いている。
これが経験の差なのかもしれない。
渡辺陸曹長と碓井一曹はレンジャーとしての訓練を受けており、この様な危機的状況においても冷静に事態を把握出来るのかもしれない。
そんな二人を気にしながら、渡辺陸曹長は更に続ける
「奴らが最初に行った攻撃で、本田・宇都木両二曹が殉死した……
再び攻撃を仕掛けて来ないところを見ると、イカレタ連中の快楽的な攻撃か…
それとも、とんだ愚か者かだ……」
そう言って笑う渡辺陸曹長は、アサルトライフルに体重を預けながら立ち上がる。
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