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「俺にもう1杯。それとこいつにカシスオレンジ。」 そう言った男にビックリするのと同時に何を言っているんだろうと睨み付ける。 すると男はふっと笑って 「俺のおごりだ。飲め。」 と言った。 そう言う男もあたしが無理してマティーニを飲んでることに気づいてか飲みやすいそちらへと変えてくれたのか。 失礼なのか、 優しいのか、 よく分からない。 それを飲んだらこの男は満足するんだろうか。 強くつかまれたその腕を振り払うことが出来なくてあたしはまたすとんと同じ席に座ってしまう。 満足したのか男はようやくあたしの腕を放す。 じんじんする左腕が熱いのは男の手につかまれて熱が伝わってきたからだ。 そう自分に言い聞かせて。  
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