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まるで草食動物のように大きく丸く、穏やかな瞳は目の前の状況よりも、
常に自身の脳裏に思う心情風景に向けられているようで。
興奮覚めやらぬといった様子で針金とロープに真剣な眼差しを注ぎ、ときたまににやけて頬を緩めさせているのも、
その小道具を使って活躍している自身の姿を思い描いているのだとは、お察し。
彼は金髪の少年の物とはデザインの違う、青色のパイロットスーツに身を包んでいた。
「拳銃や弾、財布といった常備品を持つのはともかく……針金やロープなど、普段から使えるものでも無いだろう」
「だからさ、その特別な物が必要になる『いざという時』に備えておくのが大事なんじゃない」
「……訂正する。針金やロープを持っていったところで、お前の腕でそれを扱える訳ではないだろう」
「そこは僕の直感と対応力で機転を利かせて臨機応変に……」
「無理はしなくていいぞ」
「無理じゃないって!……他にも気持ちの問題とかだって、あるじゃない?」
「オヤツ持参とは随分と用意がいいな、まるで遠足にでも行くようだ」
「君には分けてやんないよ!」
「……それはひょっとしてギャグで言ってるのか……?」
常にマイペースな茶髪の青年の行動を金髪の少年が指摘しては、スネて呆れてといった会話を続けていた。
「本当に僕が遠足気分だとか思ってる?」
「正直、お前の事は未だに良く分からないが、端から見たらそう思うだろう」
「毎度ズバズバ言ってくるなぁ……」
金髪の少年の遠慮のない言動に参ったように、茶髪の青年は後ろ髪を掻き、苦笑を浮かばせる。
お互いを好き勝手に言えるところが、二人にとって唯一気を許した事の表れであるようだ。
「とにかく、今回のチャンスは絶対に今後に逃せない、って事だけは肝に銘じてあるから」
ふと、茶髪の青年は顔を俯かせ目元を細めると、真剣味を帯びた意志を改めて示す。
あくまでその為の準備なんだからね!と、ついでに付け加え。
「……その意気込みは認めよう」
視線はモニターの計器に戻しながらも、その言葉を聞いた金髪の少年は小さく頷いて同意した。
これからの行動目的の達成は、彼にとっても…いや、お互いに最重要視すべき物なのだ。
「…………」
「…………」
会話が途切れてしまった。
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