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金髪の少年の方はこれ以上何も言うまい、といった様子で押し黙っているが、
やはり茶髪の青年にはこの事前の張り詰めた空気が我慢ならないらしい。
「あぁ!もう、まだ着かないのか?キラ・ヤマト行きます!早くハッチ開けろよ、僕が行ってやっつける!」
「何をだ」
キラ・ヤマトと名乗る茶髪の青年が煽ってくるのを、金髪の少年は半ば条件反射的に冷静な指摘で返す。
軍隊の出撃シーケンスを模したようなその発言を省みないあたり、やっぱり彼は自他共に認める「厨房」なのだった。
「はやる気持ちは分からんでもないが、まず突入口を探すのを手伝え」
「え?」
「コロニー・メンデルは、もうそこにある」
「あ……!わっ……」
金髪の少年が顎でしゃくるその先に顔を向けると、キラはまず驚きの表情を浮かばせ、続く言葉も思いつかなかったような感嘆の声を漏らす。
もう既にミストラルの視認可能範囲は全面に白みを帯びた灰色で覆われてしまっており、カメラを操作して動かしても変わりはない。
……いや、その「コロニー・メンデル」は、ミストラルのモニターに収まり切らないほどの、巨大な全貌を示していたのだ。
「大きいんだ……、ここまで近づくと。ヘリオポリスと同じくらい……、いやもっと……?」
「気付いてなかったのか……?」
「……」
金髪の少年は、無言で肯定の意を示すキラに対しやれやれ、と呆れを声に出す。
とりあえず、まともに全長など計れそうもない……ことはないだろうが、
推定して数千キロメートルほどにも及ぶであろう円柱状の建築物が、目の前にあるのだ。
例えばふとスペースシャトルの窓から宇宙を眺め、突然それが目に入ったのなら、他の人もキラのような反応をするというものだろう。
「コロニー・メンデルなんだ……。これが……」
先ほどから食い入るようにしてモニターを眺め、口を半開きにしていたキラが感慨深くも問うかのように確認する。
「……そうだ」
金髪の少年もまた、間を置いて返事を返した。
深くシートにもたれて腕を組み何やら思案している様子は、どうしても拭い切れない不安や懸念を感じさせる。
「俺達は、このコロニーの内部で『目覚めた』んだ」
それが、今分かっている「コロニー・メンデル」についての唯一にして決定的な情報だった。
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