vs.ジャンク屋見習い

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……静寂を誘う暗黒の宇宙。 その中で周囲に浮かぶデブリに混じり、星々の光を反射して進む小型の作業用ポッドが一つ。 MAW-01「ミストラル」。 ドーム状のコクピットにアームが付いている上部ユニットとエンジンを積んだ台座のような下部ユニットで分けられ、 マグネットで接続されているために状況に応じて柔軟な換装が可能。 元は連合軍のモビルアーマーとして開発され、性能面でTS-MA2「メビウス」にそのバトンを渡すまで、 連合軍の主力であった経歴を持つ、由緒正しい機体である。 メビウスの開発・量産が進み、民間の軍事産業などに売却されてなお、 その高い汎用性、信頼性から宙域作業では多くの作業者に親しまれている。 「……レーダーに映ったぞ。もうすぐ見えてくるだろう」 「うん」 そのミストラルの内部には、二人の乗員の姿があった。 運転席に座っているのは、端正な顔つきに、肩元まで伸びて微妙に毛先が曲がっている滑らかな金髪を持つ少年。 彼の頭にはバイザーとインカムが一緒になったような装置が付いてあり、今は後頭部にバイザーが上げられてΛの形をした髪留めのようになっている。 一方、後部座席に座っているのは、茶髪で長身、金髪の少年と比べて「見た目だけは」青年と言える……そういった感じの男の子。 「……まだ支度が済んでいないのか?」 即答する茶髪の青年へと視線を流し見ては、金髪の少年は困ったような表情を浮かばせ、 出発する前にやっておけと言っただろう、と付け加える。 その目つきは常に鋭く、歳の割に渋みのある声と冷静な口調もあいまって、 人を寄せ付けないような威圧感というべき力を感じさせられる。 着た後に内部の気圧を抜くことで体に吸着し、機能性を損なわせないようにする、 いわゆる「パイロットスーツ」の白色の物を着ていた。 「ちゃんと選んでおいたから、これだけに絞って持って来たんだよ」 そう言って返す彼の膝の上には双眼鏡、財布、癇癪玉、手帳サイズのノートパソコン、仕込み針金、拳銃と弾倉、ワイヤーロープ、 そしてご丁寧に小さな真空タッパーに入れられた、非常食代わりのビーフジャーキーが並んでいる。 さっきからその「特殊任務セット」を眺めては、ベルトに通して下げるタイプのポシェット状の「秘密の道具入れ」をしきりに見比べて、選別しているあたり、 少なくとも金髪の少年のような大人びた印象は感じない。
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