プロローグ

6/10
前へ
/79ページ
次へ
「はーい。ちょっと待って下さいね。……きゃああ!」  我らが唯たんの可愛らしい悲鳴。  むむっ、何事か。  当然、俺の耳はデビルズイヤー……いや、地獄耳だからヘルイヤーか……に、なる。 「な、なんで来たの、わざわざ来なくても……」  玄関からは、テンションの高めな唯の声。  その対象が自分で無いことがちょっと悔しい。  いいもん。  唯は俺のこと好きだもん。  ……好き……だもん……きっと。  …………。  ……、ちょっと気になるかな?  そう思い、廊下からそっと玄関を覗く。 「うん、え、まさかここで?」  言うやいなや、彼女が慌て出した。  キョロキョロと、後ろや回りを確認している。  もちろん、俺は上手く隠れてるさ。  それにしても、あれは誰だ?  とりあえず、男みたいだが。  そんな俺が見ている前で、その男はとんでもないことをしやがった。  そりゃ、とんでもないことさ。  彼は上着のポケットに手を入れると、そこからゆっくりと手を抜く。  そこには、黒くて見るからに高そうな箱。  そう、貴金属店で手の平サイズの特定の物を買うとついてくるような……。  まさかと思いながらも、俺は緊張せずには要られない。  そいつはゆっくりと箱を開き、その中を唯に見せた。
/79ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加