Nightingale

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飛んでゆくモノを 消えそうに鳴くモノを 私は知っている ナイチンゲール 「ルカ!!」 叫ぶ女の目の前に倒れている女性。女性――ルカは目を閉じたまま動かない。何度揺さ振ろうが、目を開いてはくれない。 左手で押さえられた横腹からは、夥しい血液が流れ続けている。 「……傷が癒える夢を見た」 ふと、唇だけ動く 「……ルカ?」 「…悪い夢じゃないよ。でも、とても悲しい夢だった」 「……?」 女は意味が解らず、眉間に皺を寄せる 「…とにかく一旦引き上げよう!医療要員の奴、いるはずだから」 「……。」 「ルカ!」 「…うん。」 軍隊は既に引き上げ、死体と白旗が虚しく風に揺られている。 嘔吐を招くような死臭に顔をしかめながら、ゆっくりとルカを抱き上げる。 「…置いていきなよ」 「な、なに言ってんのよ…っ」 「足手まといは軍にはいらない。…勿論、社会にも。」 「馬鹿なこと言わない!…行くわよ!!」 死臭漂う荒野を 女がゆっくりと歩いている 一人の女をおぶせ、ゆっくりと歩いている 左腰には似合わぬ剣をぶら下げ、女の血が、剣を辿るように、滴り落ちている 大地に落ち、赤黒く染まる 染みは、まるで足跡のようで 女の過去を造っていた 「………………鳥?」 綺麗な、しかし何処か弱々しい鳴き声が耳に届いた ルカは目を見開き、心臓が跳びはねたのを感じた ゆっくりと降下してくる鳥 荒れた荒野には、似合わぬ青い鳥が女の元へと降りてくる 「………?」 鳥は、女の肩に降り立つと、ルカを見つめる 「お前は…」 ルカが手を伸ばした瞬間、鳥は飛び立つ 「何だったの…?」 「あれは…、夢で見た……ナイチンゲール」 「ナイチンゲール?…………!あ!ルカ、傷がっ!!」 「癒しの力を持つ鳥。中国の皇帝の病気を完治させたとか、語られていた鳥」 「…。」 私はあの悲しい鳴き声を知っている。 私の傷を癒す代わりに 自分がそれを抱くからなんだ .
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