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しかし、北山の近くに来た永泉はそれ以上先に進むことが出来なかった。
(怖い…泰明殿に会うのが怖い)
拒絶されるのを想像してしまい、その場に座り込み頭を抱えて震えていた。
すると、ガサッという音が聞こえて来た。
「永…泉。何故ここにいるのだ?」
「泰明殿…」
永泉は、顔を上げ声の主を見つめた。
「それは…その…」
「…ここでは寒い。屋敷へ入れ」
「あ、はい…」
永泉は立ち上がると、泰明に続き屋敷の中へと入って行った。
どうやら連れて行かれた所は泰明の自室らしい。
泰明に座れと言われて、はいと返事をすると、行儀よく座った。
泰明は永泉に向き合う様に座ると何故来たのかと質問した。
「…泰明殿の…傷のことで、その…」
「傷?あぁ、これか。お前が心配するようなことではない…」
「し、しかし…私のせいで…」
「私が自らしたことだ」
永泉は立ち上がり泰明の側に近寄ると、傷のある所をそっと撫でた。
「泰明殿は…私がお嫌いになりました…よね」
「…?何故だ」
「最近、私と口を聞いて下さらないから…」
「それは…」
泰明はそっと永泉の頬を撫でた。
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