超能力者【前編】

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時刻は夜の12時。此所はとある廃ビルである。 すでに電気が通っていないはずの建物で、時々何かが光り、破裂した。 「――ちっ!また外したか!!すばしっこいヤツめ!!」 紙を真っ赤に染め、耳にはピアスを幾つもした男が拳を握り、壁を力いっぱい殴る。 「見たところ、上手くテメェの【能力】を使いこなせていない三流野郎だな。」 対する相手の姿は暗闇に紛れてよく見えない。 「んだとコラァ!さっきから逃げてばかりの腰抜けが人のこと言えんのか!!」 「……ったく、これだからバカは嫌いなんだよ。」 赤髪の男の正面に相手の男は立った。 窓の外から僅かに入る月の光がその人物を照らした。 紫色のつやがある漆黒の髪をし、瞳は深い紫色で、まるでこの暗闇に溶け込んでしまいそうである。 手には拳銃らしきものを一丁握っていた。 「お前の弾丸なんかより、俺の雷の方が断然速いってことぐらい分かってるんだろ? だからそいつで撃ってこれねぇ、違うか!?」 赤髪は勝ち誇ったような表情でそう言った。 だが、黒髪の方は別に慌てる様子もない。 むしろ、余裕の笑みすら浮かべている。 「何が可笑しい!」
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