存在

3/3
前へ
/108ページ
次へ
「閉館の時間ですよ。」 そう言われてハッと私は目を覚ました。窓の外は赤く、夕焼けで染まっている。 どうやら学校で出された課題をしながら眠っていたらしい。 机の上のノートやらプリントやらを片付けて、さっさと図書館を出た。 図書館に通うようになったのは5年前からだ。 理由は「静かだから勉強がはかどる」というどこかの優等生みたいなものではなく、「兄がよく通っていたから」だ。 今日こそ兄に会えるかもしれないという期待を抱いて。 街は帰宅する人や晩御飯の買い物をする人で賑わっていた。 これだけ人が沢山いると、一人くらい誰かがいなくなっても分からないだろう。 そう、私の兄のように―――
/108ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加