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その事実が明らかになったのは、警察が私達から兄の捜索願いを受け取り、兄が通う高校に調査に行ったときだそうだ。 職員が生徒に関するデータベースを見せながら 「川崎 清斗という生徒に関するデータは消されてしまっています。」 兄は前にも言ったように進学校であるこの高校でトップクラスの成績を修めているため、教員の中でも優等生として広く知られている。 そのため、教員達は動揺を隠せない様子だったそうだ。 これを不審に思った警察は直ぐ様捜索の範囲を広げた。 兄の高校は公立だから戸籍が同じ地域にないと入学を認めてくれない。 そのため、必然的に戸籍にまで捜査の手が廻ったのだ。 この事件はニュースにも取り上げられ、しばらくの間メディアを騒がせた。 しかし、メディアというのは飽きやすいもので、捜査に進展が見られなくなると次第に報道しなくなっていった。 世間では話題にならなくなったが、当事者の家族である私達は忘れることが出来ない。 あれから5年たった今でも兄に関する情報は何もない。 でも諦められない。 兄はまだ生きてこの世界にいるはずなのだから――――――――――――――
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