第Ⅲ章

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その後メールを交わし、お土産にワインを持って行く事に決めた。サヤもそれに合わせた料理を作って待つと言う。 早くサヤの手料理を食べたいという思いと、弟分であるマサトの嫁に思いを寄せるなどあってはならない事だ…と、まるで天使と悪魔が同居している心をもてあまし始めていた。 しかし、急にキャンセルしてはマサトに何と言い訳していいかも分からない。 約束の土曜…俺は意を決してマサトの家に向かった。 マサトに迎えられ、サヤに挨拶をして早速ワインで乾杯し、サヤの手料理に舌鼓をうつ。 ワインに合わせた料理という事で洋風の料理が並ぶ。 「おいしいですよ。なあマサト…お前こんなに旨いもん食ってんのか?羨ましいな。」 サヤは嬉しそうに頬を染める。マサトは 「そんなことないよ…タカシ兄が来るからって、朝からキッチンに立ちっぱなし…こんな手のこんだ料理興味ないよ…俺はお茶漬けさえあればいいタイプだからさ。」 一瞬サヤの顔が曇る…マサトはサヤの手料理すら求めていないというのか…しかし怒りをあらわにしては、この場が一気にシラケたものになる… 「なんだよマサト。嫁のいない俺への当て付けか?まあ、ガイジン並に誉められたら…やっぱ俺の居場所無いか。」 豪快に笑い飛ばす。二人もつられて笑い声をあげた。
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