第Ⅳ章

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あれから5年の月日が流れた。 マサトとの関係はとおに冷めきり、外に女がいるらしく、平日の一晩は必ず深夜遅くならないと帰って来なかった。「付き合いだって断れないんだよ。なかなか…」聞きもしない言い訳を呟き、翌週もやはり深夜の帰宅だった… いっその事泊まって来れば?そう言ってやりたい気分だったが、公認にするのもしゃくに触り「お仕事ご苦労様です。」と、頭を下げた。 ある晩マサトは珍しく上機嫌で帰って来た。何事かと思っていると、 「タカシ兄、またこっちに転勤になったんだって!今月末に引越しだってさ。4月中は色々忙しいだろうけど連休の頃なら大丈夫だろうって言うから、歓迎会やろうって約束したから…」 タカシがまた近くに戻って来る…思っても見なかった現実に私は戸惑っていた。 眠ろうと布団に入り、目を閉じるとタカシの顔が浮かんだ。しかし、思い続けているのは私だけかも知れないという現実に胸が苦しくなった。 もし…たとえそうであっても、今のままの生活が続くだけ…さみしいけれど何もなかった様に再会しよう… ただの従兄弟に戻って笑顔で迎えよう… 私は心の隅にタカシの笑顔を押し込めた…
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