第Ⅳ章

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あの時のまま… 深い意味もなく呟いた言葉…しかし私の心の内を洩らした様な気恥ずかしさに一瞬うろたえた。 「君達…うまく行ってないの?」 驚いたように聞き返す。 「一応毎日ちゃんと帰って来るし、子供が大きくなってからは時折家族で出掛ける事もある…そういう意味ではあの頃よりはまし…だけど…」 …もうずっと女として求められた事はない… 私は心の中で続けた… タカシは何か悟ったのか口ごもった…思いつめた表情で押し黙る… 私はグラスのビールを一気に飲み干した。 はぁっと息を吐き出す 「妻なんてつまらないものね…母になった途端に女ではなくなってしまうのだから…」 気持ち良さそうにイビキをかいて眠るマサトに顔を向け呟く… 今まで誰にも打ち明けられず、求める事も出来ずにいた思いが口をついて出て自分でも驚いた…いや…本当に口から出たのかさえ分からなかった。 タカシは押し黙りただビールを飲み続けていたのだから… そのまま二人は飲み続けて、冷蔵庫のビールがなくなった所でお開きとなった。 片付けて、マサトに毛布をかけ、タカシにも渡す… 私は何もなかった様に明日の朝良ければ子供と少し遊んでくれるようにお願いし、床についた。タカシは笑顔で快諾してくれたが、その笑顔の奥に何か秘めた物を宿していた。
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