第Ⅴ章

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俺は戸惑っていた。 離婚の話が出ない以上なにかしらの話し合いがあり、お互いの歩みよりがあって夫婦として成り立っている物だとばかり思っていた。 あの寂しそうな横顔… 俺はもう思いを止める自信がなくなっていた… この五年の間丸きり女っ気がなかった訳ではなかった。それなりに付き合いはしたが、心の中のサヤの面影が不意に大きくなり、後ろめたい気がして別れた。 女々しい男だと自分が情けなかった。自分から終りにしようと告げて置きながら、思いきれずにいたのだ。 俺は数日悩んでいた。もしまたメールのやりとりを始めたら… ぐるぐると止まらない思考は日を追うにつれ酷くなり、気が狂いそうだった。 とうとう俺は決心してメールを打ち始めた。 [もし良かったら いつか二人で会わないか? 日中なら子供も学校に行っているだろうし 図々しいかな… 俺からメールを辞めようと言ったのにな… 無理なら] ここまで打ち、途方にくれた。 無理なら…諦めきれるのか? それならはなからこんなメール送らなければいいではないか。 俺は今打ったメールの文面を消し、新たに打ち始めた。
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