第Ⅴ章

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約束の時間が近付き、俺の心臓は限界まで脈打っていた。自動ドアが開き人影が動く度目線をそちらに向ける… …全く大の大人が落ち着きねえな… 一人苦笑する。しかし程なくしてサヤの姿を認めた時…一瞬にして体の血液が逆流していく様な感覚に目眩がするようだった。 来た…来てくれた… 熱い物がこみあげる それを無理に押し留め立ち上がりサヤに自分の居場所を気付かせる… 俺を認め、満面の笑みを浮かべて小走り気味に歩み寄るサヤは、出会った頃の生き生きと眩しい輝きに満ちていた。 「お待たせしました」 「待ってないよ。時間通りだ。よく来てくれたね。ありがとう」 普段通りに話したいのに微妙に声がうわずる。 「いえ…私の方こそお誘い頂いて…あんな言葉まで頂いて…もう…私…ごめんなさい…」 横を向きハンカチで目を押さえる。 「昨日から涙腺緩んじゃって…」 照れたように笑う。 「もし…もし良かったら…部屋に行かないか?ここで君が泣き続けたら、俺は女を泣かせる極悪人になってしまう」 「極悪人か…それは困るわね…」 サヤは微笑み頷いた。 「じゃあ部屋取ってくる。先にエレベーターホールに行ってて。」 俺はフロントに向かい、間を置いてサヤはエレベーターホールに向かった。
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