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駅に降り立ち、待ち合わせの場所を目指す。
マサトの会社とは逆方向だし、事務職であるマサトがその辺をフラつく筈もない。
知り合いもこの辺りで仕事をしている人はいないはず…
それでも少し不安があった。普段あまり来る事のない場所で思いがけない人に会ったら…
そんな事を考えながら歩いていると、すぐにその場所にたどり着いた。
こんなところで躊躇していたら、かえって不自然か…
私はさりげなく自動ドアの前に立ち、風のように滑り込んだ。
奥の方に立ち上がる人影が視界に入る。
タカシ…
駆け出したくなる衝動を抑え近付く。
ほっとしたような笑顔を見るだけで、目がしらが熱くなる。
「お待たせしました」
そういうのが精一杯だった。タカシの言葉に返答しながら、不意に涙が溢れ出す。
うろたえながら、「部屋に行かないか」というタカシの言葉に頷いた。
待ち合わせ場所が、ホテルのラウンジであった時点で、私の心は決まっていたのだ。
タカシに誘われたなら決して拒みはしないと…
今まで長い長い間いけないと思いつつ、願い続けていたことだったのだから…
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