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不思議の国の白うさぎ
暑く熱しられた灰色のコンクリート。
自然の少ない都会に埋もれた僕等。
僕、角野 理兎(スミノ リト)には出来の良い兄が居た。
黒くサラサラの髪に、つり上がった目に、女子が騒ぎ立てしそうな高身長で格好良い容姿。頭が良くて、運動神経も性格も良い。そんな兄に、僕はいつも劣等感があった。
色素の薄い茶色かがった癖のある髪。目は兄のようにつり目ではなく、丸目。身長も167まで伸びて、ピタリと止まった。3ばっかり付いた成績表も見飽きた。
僕は、どこにでも居る男だった。
ある、爽やかな風の吹く、暖かな春の事。
兄が僕に、彼女を紹介してきた。
兄の彼女は、何かに諦めたような目をして立っていた。
黒く短い髪に、愛嬌のある小さいけど、可愛い垂れ目。低身長で、特別可愛いわけでも美しいわけでもない、その普通過ぎる容姿に親近感が湧き、話し掛けようと「あの」と声を上げると、兄に凄い勢いで睨まれた。
いつも僕には、こんな僕にも優しかった兄の目が嫉妬の炎で燃えていた。
よほど彼女が好きなのだろう。
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