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「うさぎさん!」
森の中、少女の声が聞こえ、後ろを振り向く。
そこには、青いワンピースにフリルが付いた白いエプロンドレス。青と白のボーダーのハイソックスに、青い革靴……
僕の知ってる“不思議の国のアリス”の主人公、アリスと同じ格好をしていた。
そればかりではない。
肩までの長さの金糸の綺麗な髪。透き通るような青い目。
兄の、想い人にそっくりだった。
「白うさぎさん!」
「……っ!!?」
いつの間に来たのか、アリスと思わしき女の子は僕の顔を下から覗き見て来ていた。
「白うさぎさん、私を元の世界へ帰して。」
「む、無理だよ!ぼ、僕は、僕には………」
僕には、君の夢を覚まさせる力を持ち得ていないのだから。
そう言おうとして止めた。
この世界がアリス、この女の子の夢で出来ていると、物語通りなら、もしかすると、この世界がこの子の夢だという事をこの子に理解してもらえれば、元の世界に帰れるかもしれない。
もし、この場でこの子を殺せば、夢は覚めるのかもしれない。
「じゃあ、どうしたら帰れるの?」
そう言われて、ハッとする。
「ハートの女王様に会いに……」
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