不思議の国の白うさぎ

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凛とした、女性特有の高い声が耳に入る。 未だに夢心地な僕は夢でも見ているような錯覚に捕らわれる。 「バカだね、君も。」 愛おしげな、それでいて優しい声音が僕を安心させて、瞼を開けるのでさえ億劫になる 「アリスは、愛しい人の下へ戻ったようだ。彼女はこれから幸せな人生を歩む事だろうね。結婚して、子を産み、幸せな家庭を築く。 白うさぎ、お前は何を望む? 人並みの自分の幸せか?それとも、他人の幸せか? お前の答えは、わかりきってはいるけれど。」 それでも、と続ける女性の声に、切なさがこみ上げる。 何故かはわからない。 気付いてあげないといけない事だと、直感が言うけれど、なんで? 「お前が、私を見付けてくれる事を信じるしかない。」 ポタリと、頬に冷たい雫が当たり、僕の頬を濡らした。 それが涙だと気付いたのは、彼女が鼻をすすり、涙声だったからに過ぎない。 目を開けなくちゃいけない。 不安がっていて、泣いている彼女を慰めてあげなくちゃ。 「君が、好きだよ、白うさぎ。」 あぁ、でも彼女は、僕が起きている事を、そして、目が開けられないのも。 知っている気がした。
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