2人が本棚に入れています
本棚に追加
凛とした、女性特有の高い声が耳に入る。
未だに夢心地な僕は夢でも見ているような錯覚に捕らわれる。
「バカだね、君も。」
愛おしげな、それでいて優しい声音が僕を安心させて、瞼を開けるのでさえ億劫になる
「アリスは、愛しい人の下へ戻ったようだ。彼女はこれから幸せな人生を歩む事だろうね。結婚して、子を産み、幸せな家庭を築く。
白うさぎ、お前は何を望む?
人並みの自分の幸せか?それとも、他人の幸せか?
お前の答えは、わかりきってはいるけれど。」
それでも、と続ける女性の声に、切なさがこみ上げる。
何故かはわからない。
気付いてあげないといけない事だと、直感が言うけれど、なんで?
「お前が、私を見付けてくれる事を信じるしかない。」
ポタリと、頬に冷たい雫が当たり、僕の頬を濡らした。
それが涙だと気付いたのは、彼女が鼻をすすり、涙声だったからに過ぎない。
目を開けなくちゃいけない。
不安がっていて、泣いている彼女を慰めてあげなくちゃ。
「君が、好きだよ、白うさぎ。」
あぁ、でも彼女は、僕が起きている事を、そして、目が開けられないのも。
知っている気がした。
最初のコメントを投稿しよう!