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「えッ!?」
怖くて振り向けない。
私は榛原くんの左手を掴むと、榛原くんは私を引き寄せて両手で軽々と抱き上げた。
観客の歓声が、悲鳴に変わった。
「は、榛原く…」
「早く終わりたいだろ!?急ぐよ」
まぁ、そう言われると、確かに……。
私は大人しく榛原くんにしがみつくと、榛原くんは小石の上を渡って、とうとうゴールに到着した。
パンパン!!
とゴールのピストルが高らかに鳴り響くと、観客は歓声だか悲鳴だか、どっちなのか分からない声を上げていた。
榛原くんの腕から降りて、私はチラッと榛原くんを見上げると、
「これって、私もゴール?」
と尋ねると、近くにいた審判が笑いながら、
「穴に落ちたから、失格。残念!」
と言って離れていった。私はがっくりと肩を落としたけれど、榛原くんは笑って私の肩を軽く叩いた。
「富原さん、いいでしょ。形はどうあれ、ゴールしたんだし」
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