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私がつぶやくようにそう言うと、容と隼人も顔を見合わせて頷いた。
「痴漢されてたことに気づいたから、急いで助けにいったんだな」
隼人がそう言うと、葵は春海を連れてこっちの車両にやってきた。
「生徒会長!!おはようございます!同じ電車になるなんて、奇遇ですね!!!」
姿を見つけるなり、春海はご機嫌でそう言って歩み寄ってきたので、私は小さなため息をついて春海の肩を掴んだ。
「春海。また友達より隼人を選んだね」
「あら、やだ。マキちゃんたら、一緒だったの!?ちっちゃくて見えなかったわ」
コロコロと笑いながら春海が言うので、私は口を尖らせながら隼人を見上げて、
「隼人・・・。前言撤回する」
と言うと、隼人と容は顔を見合わせて同時に吹き出した。
「もう・・・!ずるいよ。麻季ったら。朝からそんなハーレム状態でさ。意地悪したくなってもしょうがないじゃん」
春海が何故か口を尖らせて言うと、私は肩で深呼吸をした。
「好きでハーレム状態なわけじゃないもん」
私が膨れると、春海は私の腕に絡んできて甘え始めてきた。
「もう。ずるい!」
そうしているうちに高校のある駅に到着して、私たちは一斉に電車を降りると、ふと、髪の長いすごい綺麗な他校の女子高生とすれ違って、隼人とその女子が立ちどまって見詰め合っているように見えた。
気のせい?
目の大きな人形のように綺麗な人。
サラサラに流れる長い髪は、朝のさわやかな風に揺られている。
何か、言いたげにかすかに動く唇。
驚いたように彼女を見つめる隼人。
「隼人?」
私はなんだか怖くなってそう切り出すと、隼人はすぐにこっちを向いて歩み寄り、私の手を繋いで、
「行くぞ」
と言って早歩きでホームを抜けて改札を潜り抜けた。
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