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その双発爆撃機は二人乗りで、リヒトフォーフェン射撃手を担当した。
『必ず戦果を挙げてやる!』
そう意気込み…敵地へと出動した彼だったのだった。
オステンド伝書鳩部隊は10数機で、V時型の編隊を組み、敵地上空へと乗り込んだ。
彼らは目的の場所に爆弾を投下し…帰路に付いた時。
前方から敵の飛行機が銃撃を加えてきた。
『リヒトフォーフェン少尉!反撃を!』
後部座席に居る操縦手が彼に叫んだ。
リヒトフォーフェンは機銃を発射したが…
敵はそれをかわした。
『機体を2時の方向へ!』
リヒトフォーフェンの言葉に、操縦手は機体を指示通りに動かしたが…その動きは散漫だった。
敵は盛んに動き回り…
リヒトフォーフェンが放った弾丸は、一発も当たらなかった。
結局、その敵機は…他の味方によって撃墜された。
『リヒトフォーフェン少尉、あんた射撃が下手くそだなぁ』
操縦手が、堕ちて行く敵機を眺めながら言った。
『あんたの操縦が上手く無いんだ。私の言う通りに機体を動かしてくれたら…遅れはとらなかっただろうに…』
リヒトフォーフェンはカッとなり、そう言い返した。
この時、彼は…動き回る敵機を撃墜する事の難しさを痛感していた。
彼の初陣は…こんな感じのほろ苦いものだった。
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