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『失礼ですが…オズワルド・ベルケ中尉とお見受け致しましたが…』
その軍人…ベルケは、窓に向けていた顔をリヒトフォーフェンに向けた。
『ああ…私はベルケだが?君は?』
ベルケはゆったりした風情を見せ、リヒトフォーフェンに名前を聞いた。
『はっ!私はマンフレート・フォン・リヒトフォーフェンと申します!階級は少尉であります!』
リヒトフォーフェンは踵を揃え、まるで新兵が教官にするような挨拶をした。
『ははは…リヒトフォーフェン少尉、そんなに形式張る必要は無いよ。楽にしたまえ』
ベルケはその顔に微笑みを浮かべ…仕草で彼の正面の席を指した。
リヒトフォーフェンは正面に座り、いきなり切り出した。
『中尉殿、私はオステンド伝書鳩部隊に所属しておりまして…』
『ん?君はパイロットなのか、オステンドに居るのだな?』
『は、そうでありますが…未だに敵機を撃墜できずにおります。
どうか秘策のようなものを…ご教授頂きたく…』
この問いに、ベルケは笑いながら答えた。
『ははは…簡単な事だよ、リヒトフォーフェン少尉。
撃墜のコツは…上手く近づいて飛びかかったら、上手く狙って撃つだけさ』
ベルケは、生真面目に話すリヒトフォーフェンを気に入ったようで…
列車が目的地に着くまで、彼らはまるで兄弟の様に…親しげに話していた。
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