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少年の目の前に、苦しむ少女がいた。呼吸は荒く、顔色は死人のように悪い。
「痛い、痛い。」と何度も呟き、指を立てながら腹を押さえていた。
『やれ。』どこからともなく女性の声が聞こえた。スピーカー越しだからか、ノイズ音が雑じる。
少年は返事もせず、少女の近くに歩み寄る。そして口づけするかのように、少年は口元を少女の口に近付けた。そして少年は深く息を吸う。すると少女はのけ反り、口から黒い塊が飛び出し、少年の口内に吸い込まれていった。
それまで腹の痛みに苦しんでいた少女は嘘のように落ち着いた。少年は喉を押さえ、しきりに咳をしていたが、やがてそれも治まった。
『すばらしい。』感心した口調で若い男性の声が聞こえた。これもスピーカー越しである。
少年はその声の主の顔を見てやろうと、声の方に目をやったが、視線の先には吸い込まれるような闇しか無かった。
「ここはどこですか?」
『君が知る必要は無い。強いていうならば、研究所の一室だ。』
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