知った少年

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 「世界?」  少年にとって、彼の故郷が"世界の全て"であった。彼の故郷は険しい高地に位置する閉鎖的な小さな村であった。彼はそこで十九年間近く、村の外を知らずに、知ろうともせずに育ってきたのである。  『そう、世界。君の村よりもずっと広大なものだ。その世界では、子供からお年寄りまで謎の病で次々と死んでいるのだ。』  「そんなの嘘だ!じい様がおっしゃっていた!!  あなたたちは金の為に僕を狙っているって。金の為なら非人道的な事も平気で行う悪魔だって!!」  『……それはそのじい様が世界を知らないだけの話。  私たちの注す"病気"を貴方がた種族は、村に伝わる神話から"ツキガミ"と呼ぶのだろう?  "ツキガミ"は貴方がただけに関わる物では無い。憑く物では無い。  その少女が何より、村だけの問題では無いと物語っているだろう?』  体力が消耗し、意識が朦朧としている少女を見て少年は、はっとした。  少年の種族は男も女も皆、透き通るような白い肌と緑色の髪をしていた。  少女はその特徴に何一つあてはまっていない。つまり――村人でない少女が、少年の村で疫病神と呼ばれる"ツキガミ"にとりつかれたと言う事である。
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