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支度をして居間に降りると、朝ごはんと弁当を用意している母。 10分ほどすると父も降りてきた。 俺は「おはよう」と挨拶をした。 「おはよう」と答える父。 母は視線を少しだけ父に向け、無視した。 見慣れた朝の風景だ。 いつからか、俺が反抗期を終えたころから、父と母の会話という会話を聞くことは無くなっていた。 加えて俺も話すことが出来なくなった。 たったの3人家族。 妹でもいれば少しは違ったのかな、と思う。 少なくとも母は違っただろう。 夫婦が壊れるとあっという間に冷えきる家族。 夫婦とは恐ろしい。 1年くらい前、俺の両親は多分、離婚の危機だった。 正直、離婚するだろうと思っていた。 秒読み段階だったはず。 でもしなかった。 なぜだろう? そもそも離婚の危機に陥ったのはなぜだろう。 俺には考えても考えても辿り着かなかった。 20も30も歳の離れた男と女を理解するなんて到底無理なのだ。 いつか、ぼーっと 『離婚するならそれでいい。2人が元気でいれるなら、それが一番だ。』 と思ったことがある。 それぐらいしか、俺に言えることは無かった。 俺は昔から父が好きだった。 喋るのも得意ではないし、家のことも殆ど何も出来ない男だ。 別に、尊敬もしてない。憧れてもいない。 でも、守られてる、と感じる。 .image=248204677.jpg
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