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父と一緒に家を出た。 登校と出勤がかぶるのはよくある。 駅まで二人で、大体無言で歩く。 俺が思うに、父はわざと出る時間を合わせている。 理由はきっと色々だ。 『色々』という表現が適切だと思う。 父にしかわからない。 俺は出掛けに母から渡された弁当を父に渡した。 父はいつも黙って受け取る。 「これ、食べて。」 「ああ。」 「購買、行くから。」 「ああ。」 父は弁当を受け取ると、財布から千円札を取り出して俺にくれた。 これも、大体いつものことで、俺は軽くお礼を言う。 何気に、月々の小遣いが足りてない俺には、とても助かる収入だった。 高校3年になってからは、バイトは辞めてしまった。 バイトの代わりに塾か図書館に通って、とにかく、今まで遊んだ分を取り戻そうと必死に勉強していた。 学校の友達も先生も、みんな受験モード。 本気で毎日息苦しい。 受験勉強は、学校の日々の授業とはまるで別物で、推薦狙いの奴以外は、みんな授業にはとりあえず出席しているだけだ。 それでは一体何のために9年の義務教育と、高校の3年間があるのか、3年になってからは特に疑問だった。 .
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