紅石

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紅い石は 隅で 静かに 聞いていました なんだか 急に 話し声が 途絶えたので あたりを そっと 見回すと 皆が こちらを 見ています ねぇ、アンタは どうして持ち主を 不幸にするの! ダイヤが 意地悪く言いました 私は ・・ 真珠も言います あたし達って 持ち主を いい気分に するものよ アンタは 違うのね! 紅い石は ただ 黙っているより ありませんでした 私も 持ち主を 幸せにしたい!輝く笑顔が見たい! それなのに 何故 いつも? それから 時が過ぎ 紅い石の持ち主は 又 亡くなりました 結婚式の直前に 相手が 心変わり したのです 悲しみのあまり 彼女は 川に 身を投げました 真っ赤なルビーをつけたまま 彼女の両親は 娘が死んだのは 紅い石のせいだと 思いました 例えば そうでなくても 紅い石のせいにしたかったのでしょう 悲しすぎて 苦しすぎて 紅い石は 棄てられました 何もない 誰も来ない 砂漠に 太陽の光を受けて 紅い石は 血の涙を流しているように キラキラと 紅く紅く 光って いました 涼しげな 一陣の風が 暑い砂漠に 吹きわたり おいで! あなた 誰? いいから おいで! 何もしていないのに 不幸の石と呼ばれ 悲しみに くれていた 紅い石は 軽やかに 旅だったのです 誰の嘆きの声も 届かない旅へと。
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