スミレ

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それから 何日か過ぎ 静かな森が 急に 騒がしくなりました。 人の話し声 笑い声が、 あたりにひびいています 男の人 女の人が 何人も 歩いています。 森に、ピクニックに、 来たのでしょう。 カシの木の下で、お弁当を広げて 楽しそうに おしゃべりをしています。 スミレは、小さな体を もっと 小さくして なるべく めだたないように していました。 でも、一人の女の人が 見つけてしまいました。 『アラ かわいい! 持って帰りたいワ』 空になった紙コップに土を入れ 根っこごと スミレを すくい入れました。 『おじさん!カシの木のおじさん!私 どうなるの?どこへ連れて行かれるの』 何度も 何度も スミレは、叫びました。 カシの木は枝をザワザワとふるわせるばかりで 何も答えてくれませんでした。 紙コップを手に 女の人が帰って行く姿を 見送りながら『元気でいるんだよ』カシの木は つぶやきました。
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