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寒い。 薄く瞼を持ち上げて、最初に思ったのはそれだった。 身を切るような冷気が、辺りに漂っている。 はて昨夜はこんなに寒かっただろうかと、皐は寝ぼけた頭で考えた。 (まあ、一月だしな。しょうがないか) そう思うことにして、皐は再び目を閉じた。 (身体があちこち痛いな……あんな夢みたせいか) こんな時は二度寝が一番だと、布団を引っ張り上げて、 気付いた。 ざらざらとしたこの感触。薄っぺらく硬いこれは――。 (……カー……ペット) 愕然とし、思わず目を開けたところで、もう一つの事実に気が付いてしまった。 頬に当たる冷え切った、ほのかに木の臭いがする、それ。 (床……じゃねぇか!) 皐は勢いよくがばっと跳ね起きた。 床だった。 床に寝ていた。 ――カーペットを、布団代わりにして。 あまりの寒さに、無意識下で引っ張って来たのだろうか。 だがしかし。 皐は首を捻った。 昨晩はきちんとベッドに横になって寝た記憶がある。寝ぼけていた可能性も無いわけじゃないが、いくらなんでも床で寝たりはしないと思う。
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