1/

5/22
前へ
/73ページ
次へ
「ふぁ……あ」 ああ、嗚呼、今はそんなことよりも。 瞼が重く、頭がぼーっとする。 つまり、身体がまだ睡眠を欲しているということだろう。 むくりと起き上がると、ベッドに近付く。 ベッド以外にほとんど何もない部屋なので、障害物などありはしない。 が。 皐の足は、ぴたりと止まってしまった。 「何だってんだよ……」 溜息をつきつつ、そっちを見る。 何の変哲もない、少し大きめのベッド。 青い布団の、あの膨らみ。 そして、ベッドから生えた、黒くて長い真っ直ぐな髪の毛。 人、それも、おそらくは女だろう。 「俺ぁ、こんなもん入れた覚えねぇぞ……」 だとしたら、不法侵入者――。 皐は得に警戒したそぶりも見せず、だらけた表情で、 布団をはいだ。 「おい、お前! ここで何して………………」 喉の奥が引きつれたような、錯覚が襲う。 「………お……い?」 皐は大きく目を見開いた。 (……は、) 息を詰めて、しかしすぐに吐き出す。 (んな訳ないよな……) 皐は、ソイツの顔をじろじろと眺めた。 女だった。 否、少女だった。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加