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黒い髪は想像以上に長く、ベッド中に広がっている。
伏せられた睫毛も長く濃く、小さな鼻梁も薄紅色の口も、非常に整った形をしている。
すうすうと、気持ち良さげに寝息をたてている、その少女。
今見ると、まるで似てはいない。
ではなぜ、見間違えたのか。
あの、『女』と。
皐は頭を振った。
久々に、あの夢を見たせいだろう。
そう自分を納得させると、皐は無性に腹がたってきた。
(俺が寒さに震えているときにコイツは……!)
皐の目が据わる。
と、おもむろに足を持ち上げた。
(ざけんじゃねぇ)
標的を定めて。
――勢いよく突き出した。
ぼぐ。
鈍い音とともに、少女の背中にクリーンヒットする。
少女はごろごろと端まで転がった。
そして少女は。
自らの体重で、
ぼてっと落ちた。
「……ぐぅ」
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