1/

8/22
前へ
/73ページ
次へ
少女はむくりと起き上がると、おもむろに胡座をかいた。 (あぐら……胡座か。まあ、いいけどよ) 少し意外に思って見ていると、 「ボクを……足蹴に、した……」 ぽつぽつと、少女は言った。 相変わらず情の篭らない、澄んだ声で。 『ボク』! 『ボク』なのか! 皐は内心呆れていた。 人は見かけによらないものだ、と。 「何言ってんだ不法侵入者が。おまけに人の安眠まで邪魔しやがって」 「ぐぐぴ、ぐぐぴと。苦しげにイビキをかきながら、眠るのを。貴方は……安眠と、言う」 う、なんと。 「うるせぇ。それでテメェにベッドから落とされる意味が分からねぇよ」 「それは。ボクの、セリフ」 平易に紡がれる言葉が、余計に腹立たしかった。 苛々しながらも、とりあえずは状況を確認してみようと、口を開く。 「お前どうやって入って来たんだよ?」 「玄関……開いてた」 「あー、閉め忘れてたか」 こくんと頷く、少女。 (変なヤツ……。ま、早く出ていってもらうに越したことはないか) 荒業だが、手っ取り早く引き取ってもらう方法がある。 その名も、 ――脅し。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

288人が本棚に入れています
本棚に追加