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少女はむくりと起き上がると、おもむろに胡座をかいた。
(あぐら……胡座か。まあ、いいけどよ)
少し意外に思って見ていると、
「ボクを……足蹴に、した……」
ぽつぽつと、少女は言った。
相変わらず情の篭らない、澄んだ声で。
『ボク』!
『ボク』なのか!
皐は内心呆れていた。
人は見かけによらないものだ、と。
「何言ってんだ不法侵入者が。おまけに人の安眠まで邪魔しやがって」
「ぐぐぴ、ぐぐぴと。苦しげにイビキをかきながら、眠るのを。貴方は……安眠と、言う」
う、なんと。
「うるせぇ。それでテメェにベッドから落とされる意味が分からねぇよ」
「それは。ボクの、セリフ」
平易に紡がれる言葉が、余計に腹立たしかった。
苛々しながらも、とりあえずは状況を確認してみようと、口を開く。
「お前どうやって入って来たんだよ?」
「玄関……開いてた」
「あー、閉め忘れてたか」
こくんと頷く、少女。
(変なヤツ……。ま、早く出ていってもらうに越したことはないか)
荒業だが、手っ取り早く引き取ってもらう方法がある。
その名も、
――脅し。
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