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「おい、おっさん」
「な、なんだ」
いきなり声をかけられ、男はびくっと飛び上がった。
「邪魔だ。退いてろ」
なおざりな言い方に、男は眉を跳ね上げた。
「な、いきなり何をいうんだ。ここはわたしにまかせて、退くのは君だろう」
すると青年は、
はあぁぁぁ……。
と、大仰に溜息をついた。
「分かんねぇのか、おっさん。あんたじゃ無理だって」
男は少しむっとして、言い返す。
「さっきも言っていたが……どういう意味だ。これでもわたしは少佐の地位に――」
「関係ねぇよんなの。あれ見てみろ」
男の言葉をばっさり遮って、青年は影の方を指差した。
「あの刀。あれ魔法具だ。名前は忘れたがな、他の魔法具の力を無効化する類のもんだ。あんたじゃどうしようもない」
「そ、そんなものが……」
「そーそー。だから大人しく退いてろって」
「いや、なら尚更君が――」
なおも食い下がると、青年はずいと男に近づいた。
「だぁ……からぁ…………」
そこで、声がぐっと低くなる。
「邪魔だ、つってんだよ。さっさと退かねぇと――」
消すぞ……?
声を荒げた訳でもなく、むしろ静かに紡がれた言葉に、しかし男は腰を抜かしてしまった。
――それほどの威圧感と、畏れを他人に植え付ける言い方だった。
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