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「おいそこのフード野郎。食料置いてきな」
砂だけが広がる砂漠。どこまで見渡しても砂と岩だけ。
そんな場所に二人の人間がいた。ギラギラと太陽の光を浴びながら大男が言った。
風格から旅人などを狙う賊の輩であろうか?口元の髭は伸ばし放題で、顔のできものが嫌悪感を生む。
フードの小柄の人は少し男の事を見た後、何事もなかったかの様に歩き出した。
「おい!待て!」
男は声を荒げながらフードの端を掴む。
するとフードが軽快な音をたてながら破れた。
瞬間、長く赤い髪がなびく。フードの中から現れたのは顔の整った正に美少女と呼べる女の子であった。
白いワンピースに黒いハイソックス。砂漠には似合わない格好で彼女は姿をあらわにした。
「貴方、盗賊?」
彼女はやっと口を開いた。
男は彼女に見とれながら答える。
「あっ、あぁ」
「盗賊を止めて真面目に生きていくつもりはある?」
彼女は真っ直ぐに男の目を捉え尋ねた。
「はっ!あるわけねえだろ?こんなご時世だぜ?真面目にしたら絶対損しちまう!」
男はまるで馬鹿を見るような目で彼女にそう告げた。
「そう……」
彼女は呟いた。
「ヒース」
「何でしょうかお嬢様?」
彼女の隣に音もたてずに酷く綺麗な顔をした黒い長髪の青年が現れた。黒いスーツの様な、それでいて動き易い服を着ている。
「今回も失敗……悪事が出来ないように適当にお仕置きしてあげて」
目を閉じ溜息をつきながら彼女は青年に言う。
「……チッ、わかりました」
「……ちょっと、マリルがせっかく決めてるんだから真面目にやってよぉ!」
「クフッ」
女の子が青年の胸辺りをポカポカと両手で叩く。
「ふぇーん!ヒースが虐めるよぉ!」
「クフフッ」
盗賊は思った。こいつらは一体何がしたいんだと。
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