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ふと、男の頭に過ぎった。男は何の躊躇も無く思ったままを口に出す。
「お前らひょっとして馬鹿か?」
盗賊の目の前でおちゃらける彼等は確かに誰が見ても馬鹿と思えるだろう。
しかし、その言葉は彼には言ってはならない言葉であった。
「クフッ……馬鹿ですってお嬢様」
「ヒースの方が馬鹿だもん!」
一見、余裕の態度にしか見えないだろう。しかし、盗賊は膝が震えていた。
それは彼、ヒースと呼ばれた青年から発っせられる憤怒の眼光。
「……盗賊さん」
「なっ、なんだ?」
「私、昔から一つだけ言われたくない言葉があるんですよ。馬鹿……クフッ。そう、馬鹿とは言われたくないんですよ。えぇ、確かに私は馬鹿かもしれません、しかし、他人の貴方に言われたくありませんし、言われたから?だから?余計なお世話なんですよ!」
物凄い早口でヒースは言い切った。言い終わると不気味な笑い方をしながら盗賊に近づく。
盗賊の悲鳴を背に、目尻に涙を一杯、溜めた美少女、マリルは歩きだした。
彼等はマリルとヒース。
関係はご主人様と執事。
マリルはいいとこの貴族だった。しかし、両親を賊に殺され一人の執事と、悪党を殲滅する為に旅をしている。
勿論、一人の執事とはヒースの事である。
「ヒースの馬鹿ぁ!馬鹿、馬鹿、馬鹿ぁ!何でいっつも大事な所でボケるのよぉ!」
「クフッ、これも執事のたしなみ……」
※注※
彼は普通の執事ではありません。主人を困らせ主人の反応を見て楽しむサドスティックな性格の持ち主です。
「そうなんだぁ……」
※注※
彼女も決して普通のお嬢様ではありません。はっきり言いまして只の馬鹿です。
「そういえばあの盗賊のお仕置きは済ませたの?」
「えぇ、急所に突きを三発ずつ食らわせた後、股間を思い切り蹴り上げてやりました……クフッ」
「いくら馬鹿って言われたからってやりすぎよ?」
「ムカついてやった。反省はしてない……クフッ」
「真面目にきいてよぉ!」
彼等は大体、ヒースがマリルを虐めて半泣きにした後、放置プレイに決め込むのが日常である。
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