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隔離病棟
白い壁
オウム返しの反響
覗き込む月
空っぽな空
風の呪文
一定のリズムの呼吸
瞬き
私が止まったら
全て飲み込んでしまいそうだ
私は
私が少なからず生があることを
微々たる抵抗で示す
何かを欲するのは
手に入る可能性があってその欲求は発動する
全て奪い去られ
与えられず
ただ生かしておくためだけの食事が出され
理由も解らない薬を監視下のもと飲まされる
私の言葉で状態なんて聞こうともしない
毎日の採血で腕が痣だらけ
生きた人間を扱ってるとは思えない
ただ淡々と作業を進めるだけ
また点滴
注射
検査
こんな部屋を出れるのは嬉しいけど
手首を結ぶ紐が痛い
痒くて軽く紐と擦り合わせて痒みを落ち着かせようとしたら
痛みと痒みが鈍く走った
最初は人間としての扱いをされていないことが悔しかったけど
時間の自由
発言の自由
体の自由
精神の自由を
私には必要ないと扱われていくと
私はただ生かされている肉体だけとなった
何も指図はされない
私はここの人間の意のままに動かされているだけ
意のままに生を決められているだけ
どうしてあの時
助かってしまったのだろう
無になりたかったけど
体を残して無になりたくはなかった
もう精神も魂も
私の体に存在しない
残った体は私に話しかけもしないこの人達に
いらなくなったら処分されるだけなんだろう
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