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「学校?」
去年の秋――陽は育ての親である示遠(シオン)に、学校に行かないかと言われた。
「そ、陽も年齢的に学校に通ってもいい頃だろ?」
「それはそうですけど……何でまた?」
「お前を拾ってだいぶ経つが、他人と深く関わる事なんて無かっただろ。
学校にでも行って人と関わるのも良いかと思ってな。」
陽は昔、親に捨てられて途方に暮れていた所を心に拾われた。それからは示遠と2人で暮らしている。
「でも……僕が行っても大丈夫でしょうか?」
陽の魔力は世界最強と呼べるほどに高い。それこそ、魔法を使うと大惨事になりかねない程に。
そのため、魔法が日常で使われる社会において、陽の使う魔法は危険なのだ。故に、陽は人と極力関わらず生活している。勿論、学校になど行っていない。
陽は自分の危険性故に学校へ行く事を渋っている。しかし、ここで示遠から助け船が出された。
「その事は心配するな。
魔法科以外の学科なら、大抵は魔法実技が無いからお前が入っても大丈夫だ」
魔法科は魔法の探究や訓練を主としている。しかし、他の科はそれが無い。魔法の基本的な扱いは中学校の時点で終了しているからだ。
「それなら大丈夫でしょうけど……」
「俺の負担なら心配しなくていいぞ。
今まで同年代のヤツと話した事すら無かったんだ。高校ぐらい行っても良いだろ」
「…………」
陽にとって悪い話では無い。それに、親である示遠にそこまで言われると、断る気にはなれなかった。
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