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「あの! 退いてください、お願いします!」
ぎゅーっと抱き締められるのは、別段嫌な思いはしない。しかし、この状況でこれはヤバすぎる。
それにお母様の大きい胸がもろに当たっていますよ、ええ。もう緊張とかの度合い越えてます。
「嫌ですわ! もう今日はわたくしの部屋にお持ち帰りしますわ!」
「お母様! 離れなさいよ!」
玲奈お嬢様が必死でお母様をどかそうとしているのがわかる。
というより、何でこんなことになったのだろう?
もしかして、僕のせいか? 僕があの時、神に祈ったからか?
だとしたら、なんと皮肉なことなのだろう。助けを呼んだはずなのに、来てくれた女性はなぜか暴走してる。
「……あら、わたくしったら。すみません。隼人さんのあまりにも可愛い姿に……」
そうこうしてると、正気を取り戻したのか、お母様が離れてくれた。ようやく立ち上がれた。それでも、目と鼻の先にはその美貌が微笑んでいる。
「わたくしの名は、東条院紗香です。よろしくですわ。できれば今からわたくしの部屋にでも……」
「……気持ちだけいただいておきます」
紗香さんには悪いが、人妻と浮気をする趣味はないし、お嬢様の専属執事がそんなことをするなど言語道断だ。
「そうよ! よく言ったわね、隼人ッ! お母様じゃなくて、隼人は私の執事なのよ」
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