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「すみません。無理です」
「聞こえないわ」
「いや、ホント無理です! 僕、そんな執事の教育とか受けたことないし! ていうか、なんで僕が!? 何か東条院グループに嫌なことしましたか!?」
これだけ大声で言えば、彼女もわかってくれるだろう。
これから、楽しい高校生活が待ってるというのに、執事生活になるなんて御免だ。
「聞こえないわ。全然聞こえない」
怜奈さんはかたくなに、僕の言葉を聞かないつもりだ。なんか、耳に指突っ込んでるし。
どんだけ我が儘なんだか……。
「……帰ります。さようなら」
僕はきびすを返して、延々と続いてる庭を歩き出す。
彼女がどうしても帰してくれないのなら、無理にでも自分で帰るだけだ。
だって、人の意思を無視してるもん、この話。
「黒服! 隼人を捕まえなさい!」
「はい、お嬢様!」
怜奈さんの声に合わせて、ドタドタと音がした。振り返ると、黒服さんが走ってきている。
しかも、速さが半端じゃない。
僕も一応、足は速い方だと思う。けど、黒服さんは別格だったようで、すぐに捕まり、怜奈さんの目の前に連れてこられた。
「隼人……、そんなに執事は嫌……?」
「……うっ……」
破壊力抜群の涙目と上目遣い。
一般人である僕の理性など、粉々に砕いてくれた。
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