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「いや…………ではないですけど……」
「いやじゃないなら……何?」
「僕じゃダメですよ。あなたの執事なんかなれませんよ」
怜奈さんが俯いた。
相変わらず、黒服さんに捕まれて身動きのとれない僕には彼女の表情を確認する術はない。
けど、悲しませたという自覚はある。
しばらくして、怜奈さんは顔を上げた。さっきまでの悲しみの色はなく、怒ってるように見える。
僕が口を開く前に、怜奈さんは僕を指差した。
「あんた、私の執事になりなさい! 絶対よ絶対! 天地が引っくり返ろうとも、これは決定事項なんだから!!」
「…………無理矢理ですか?」
「そんなのどうでも良いじゃないの! ほら、早く執事になるって言いなさい!」
言ってることは無茶苦茶だが、必死になのは伝わってくる。
もし、いやとか言ったら、僕はどうなるんだろう?
想像するのを止めた。
僕にこれを断れる度胸はない。
「わかりました。僕で良ければ、怜奈さんの専用執事、やらせてもらいます」
「ふん、最初からそう言えば良いのよ! あと、怜奈さんじゃなくて怜奈お嬢様よ!」
「はい、怜奈お嬢様」
そして、怜奈お嬢様の専用執事になったのだが、後から聞いた話だと、これは前々から決まっていたことらしい。
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