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はじめに見た光景は、黒い膜のようなものが塀に隔てられて並んでいる部屋だった。
そのうちのひとつに入ってみると、はじめに立っていたところ、つまり最初に戻ってきた。
「戻ってきたって事ははずれを引くとはじめに戻ってくるらしいな」
俺はそうつぶやくと、手当たり次第に膜の中に入っていった……。
しばらくして、何回か戻ってきてやっと、当たりを引いた俺が見たものは、やはり膜が立ち並んだ部屋だった。
「おいおい、またかよ」
また探すのか、という気持ちで歩き始めたとき、近くの角から何かが現れた。それは何か得体の知れない生き物だった。
「何だ、ありゃ」
その生き物は、手らしきものを横に広げて、ブオーという音を発しながらこちらに向かって走りだした。
「うわぁ、助けてくれ!」
広い部屋の中での、孤独な追いかけっこが始まった。自慢ではないが、俺は足が学校一の俊足といわれている。しかし、やつは俺より速いらしい。どんどん差が縮まっていく。
このままではマズいと思った時、目の前に膜が現れた。やった、助かったと思い、飛び込むとそこは見覚えのある部屋、つまり最初に戻ってきたのだった。
さっき通った膜は手探りで当てたので、すっかり忘れていた。
「……」
やっとの思いで次の部屋に進んだ俺は、さっきの生き物はいるかと、見回したがいなかったので、近くにあった膜に入ってみた。
するとそこはテラスだった。そのとき、ふと疑問に思った。自分は一階からはいったはずなのになぜこんな高い(三階ぐらい)ところにいるんだろうか。まあいいか。
見渡すと、全部で十個ほどの膜があった。俺が出てきたのは一番右の膜だったから一番左の膜に入った。
なんと当たりだった、この部屋も最初と2番目の部屋と同じつくりだった。
当たりはひとつしかなさそうなので、慎重に選んでいると、三つ先の角からさっきと同じような生き物が現れた。生き物は、俺を見つけると追いかけてきた。
「またかよ……」
再び追いかけっこが始まった。歩き疲れているところだったので、あっという間に差が縮まっていく。
どこかに入らなければと思っていると、二つ先の角からまた生き物が現れた。
「しまった、挟まれた」
とっさに右の膜に飛び込むとそこは次の部屋だった。ほかの部屋と違うところは、塀の幅が人一人乗れるぐらいになっていた。
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