** 淡く儚く

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「────は?」 銀は唐突に脈絡のないことを尋ねられて、目を見開いている。 「だから、なんでカルテ持ってないのかって聞いてんの。 実はヤブ医者なんだね?」 からかってやると苦笑い。 ほんと、つまんないよ。 「灯涙、カルテ嫌いなんだろ? だから暗記だよ、暗記」 予想の範疇をこえた解答に僕は固まってしまった。 カルテを嫌いなのはあたってる。あれは嫌い。 だけど───────。 「わざわざ暗記してんの? けっこう暇なんだね」 暗記してまでカルテを持ち出さないのは銀だけだった。 今まで、そんな医者みたことなかったし、まさかそこまでするとは思ってもみなかった。 「暇って………ひどいなぁ。 俺けっこう頑張ってるっしょ?」 嬉しそうにかっこつけてる医者なんて、はじめてだ。
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