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…イライラしてしまう。
麻菜はそわそわしながら江間の背中を目で追っている。
「…うん、もう行く」
「…よし」
私は麻菜の頭をポンポンと叩いた。
ちゃんと言えばわかってくれる、いい子なんだ、麻菜は。
「ねえ、要お兄ちゃん」
「何?」
私は薄く笑みを浮かべて返事をしたが
「いつも江間先輩の隣にいる人、誰?」
静かに笑みが消えた。
「…麻菜がそれを知ってどうするんだ?」
あいつを突き飛ばして江間の隣に割り込むのか?麻菜はそんな子じゃないだろう?
「ハア…」
ため息もつきたくなる…。
「…あいつは3の2の鞠手 里桜。江間の幼なじみらしい」
言ってからハッとした。口をついて出てしまった。
「お兄ちゃん…!」
ああ…私は本能のままに行動しているんだ…。こう言うと麻菜は喜ぶ…それを本能で知ってるんだ…。
「私はこれぐらいしか知らない。あとは自分で調べろよ」
「うん…!」」
この笑顔を見たいがために、私は自分の首を絞める。
この手の温もりを手放したくないが故に、その手を緩めている。
何をしてるんだ私は…!麻菜に見えないようにキッと唇を噛む。
そうして、麻菜が離れていくのを知っていて…。
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