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ざっぱあああーんと、リアルな波打が聞こえる。
スピーカーに集中していた少年にとって、何よりも攻撃というか、精神的によく効いた。
「あぁ、起きてたの………」
ドアが開いて、片手で耳を塞いでいる魔族の女性が入っていた。
本来なら美人に入って見惚れてしまう美貌と顔立ちは、不機嫌さで台なしになっていた。
「スピーカー、どこ?」
「――あそこ」
女性は、皮膜の羽を広げて天井へと飛んだのを少年が視線で追った。
ただ、飛んだだけに少年には写った――。
ガッシャン、と床には天井の破片と機械類の残骸がふりかけの具材のように落ちてきた。
一瞬という、速さで天井ごとスピーカーを切り刻んで見せたのだ。
羽を閉じ空中で一回転し、床に着地する女性。
ふわりと柔らかく広がる白い長髪。
その後ろ姿は、まるで天使が羽を休める姿に見えた。
「さてと………聞きたいことは?」
ぽんぽんと付いたであろう埃を払いながら、女性は少年へと近寄る。
「名は?」
「私は見た目通り、魔族よ。名前はロンッナ」
「ここは、どこ?」
「ここは、私の飛行艇・空挺(くうてい)。ここは、あんたの部屋になる予定」
「飛行艇……」
――嘘がいいと少年は、胸のうちで呟いた。
地上に近い空域ならば、少年は、飛び降りても助かる身体能力はある。
飛空挺は、飛行機よりも高い空域を飛ぶ。
少年は、逃げる事は出来ないということだ。
「本当に申し訳ないわ。これでもマシな方なんだけど………」
呆れ、疲れが混ざって疲れきった顔して、細い首をかっくんとおった。
「マシな方……」
少年は、眉毛を吊り上げて
「拉致だけで終わらせたのよ。前は、発光弾と手榴弾を間違えて街一つを消しかけたわ………」
「……。手榴弾なら、そこまでの威力はない」
「普通ならね。あいつのお手製だったのよ」
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