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最後の歴史というわれる都市を荒野に辛うじて建っているような廃墟の屋根から見ている人影。
この都市は、華やかなネオンの光に包まれていて、それは、大きな蓮の花にも見て取れた。
薄暗い夜の黒月が出ている夜には余計にそう思わせた。
そして、華に隠れた虫のように動き出す裏社会も黒月の夜に動き出す。
「よし、やるっ」
覗いていた双眼鏡が後ろから来た蹴りによって、煉瓦の瓦に当たり眸を襲う凶器へと変わった。
「――いつもの仕返しよ」
痛みに悶絶して、転がる様を見ていたのも楽しい。
胸倉を掴むと、最も嫌がる事を思い出して日頃の腹いせの仕返しをする。
パキ、と軋む羽の基礎となる骨格がパーカーから伸びていく。
深紅色の骨格で、見るだけでわかる生暖かさがあった。
「グロッキー!!!!」
「吐かないでよ、汚れる」
お気に入りの服に吐きそうな表情を浮かべたので、胸倉を離した。
背中には、骨格ではない皮膜の羽が広げていた。
この瞬間に空は庭になり、風は友へと変わった。
友が一番に教えたのは、一番恐れていたことだった。
「やっぱり、ここにいなさいよ。足手まといになるから」
眉が寄り眉間を歪める。
生臭く、鉄のような匂い。
「だいじょーぶ、決めたんだ、俺は――。オルグランを破壊する」
揺るぎない眼差しと決意に満ちた横顔。
そして、真っ赤な髪の毛。
オルグランで魔王を封じた者と同じ色だった。
――皮肉ね、同じ髪色がそんな事を思うなんて……
羽を動かして身体を浮かべながら、そう思った。
そして、裏社会の取引現場へと向かった。
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