3人が本棚に入れています
本棚に追加
「――殺す」
馴染みの部屋の残骸の中心に立つ少年は、怒りを表して呟く。
いきなり、部屋に来て爆発される。
ここまで、怒りや殺意を覚えたのは初めてかもしれない。
藍と緑の瞳が猫科のような楕円へと変化。
同時に両手の手首を外側へと曲げて、腕に仕込んだ仕掛けが動き、両手の指の間に流れるようにナイフが握られる。
その様は見掛けとは違い百獣の王の気配を思わせる。
「おー、生きてた、生きてた」
怒りの発端の声に、少年の身体は素早く動く。
狙って現れたのか――と頭の奥深くで、少年は同情を交えて呟いた。
少年の殺傷能力が完全解禁された今では、加減だと出来ない。
しかし、ナイフの先端は、喉仏に刺さる直前で止めていた。
「――アカが何の用」
煤を払い除けて、目の前にいるものを睨み付けた。
「不貞腐れた面つんなよぉー。ただ、度が行き過ぎたお茶な悪戯だろうー?」
アカと呼ばれたのに、不快な顔もせずにっこりと爽やか笑顔。
青い双眸、体格も良く、幼さはあるものの美形の顔立ち――そこまでは普通。
飾りのように青色の布地から見える髪は、純粋な炎を思わせる位に印象に残る。
赤と呼ばれ、この国々で忌み嫌われる種族だった。
「行き過ぎてるって自覚あるんだ………」
皮膜状の翼が不気味な骨が軋む音をたてながら仕舞い、呆れた声を上げた。
皮膜状の翼、褐色の肌と白の瞳を持つ――それは、摩族。
あの爆発の直前に、羽を広げて空に逃げていただろう。
「――何のよう、だ?」
しかし、少年は、表情を崩さない。
「用か………」
最初のコメントを投稿しよう!