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殺気がない奴には、免疫がない為に少年は油断して相手を舐めきっていた。
それを少年は物凄く後悔していた。
殴れて気絶させられ、少年は見知らぬ質素な部屋にいた。
もちろん、普通の状態ではなく巻き寿司のように、太い縄でぐるぐるに縛り上げいた。
服装は、気絶する前と変わらない。
しかし、愛用のナイフはなくなり、服の下に仕込んである武器が肌に感触もない。
(ナイフ、没収。仕込みも全部………)
少年はがっくりと肩、首を落とした。
何たる失態だ、この様は………。
自己嫌悪になりつつも少年は、周りの状況と自分がどんな状況下にあるのかを頭は整理を始めた。
居るのは、生活感がない質素な部屋。
窓は防弾ガラス、一つで鉄格子付き。
ドアには鍵はない。
ドアから聞こえるのは、機械設備の動く重々しい音。
しかし、あの部屋を爆発したような行動をやる奴らだ。
どんな仕掛けがあるのか――と少年の過去の経験と知識を駆使して予想してみる。
(死ぬギリギリの電撃、また爆弾――………)
有り得ないと思うのは、この二つ。
物理的な攻撃ならば少年には楽にくぐり抜ける自信がある。
少年の身体能力は、そこまで並の人間とは異かなるのだ。しかし、少年自身はそこまでの身体能力を得たことはわからない。
「………じゃ」
小さく始めることを自身に宣言すると、少年の爪が獣のように鋭く伸びていく。
(この長さで良いか)
背中を傷つけないようにきよつけて、少年は太い縄を切り刻んで行く。
『お前、何だ!!』
『ば、化け物…………っ』
不意に過ぎった記憶は、一番新しいものだ。
少年が仕事を終えて依頼人の所へと帰った時に、言われた言葉だった。
縄がぱた、ぱたと落ちると、ドアノブに少年はゆっくりと指先を触れた。
(――何が来るか……)
ごくりと、唾を飲み込んだ。
その時に、ザー、ザー……ととぎれとぎれの音。
緊張感に満ちいていた少年の身体はビクッと肩を揺らした。
段々と安定していくのを伺いながら、耳をすまして天井のスピーカーを見上げた。
スピーカーの近くには、監視カメラなどは見られないが、油断は出来ない。
『兄弟船は荒波越え、港へとぉぉーっ!!』
あの爆弾の声が拳の効いた歌声とサウンドが大音量で、少年の耳から部屋全体に響く。
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